天才、再び。

むかし、貸しギャラリーという形でカフェの一部を貸し出していた頃、3人の天才たちに出会った。
一人は、“ダルマ”という名の絵描き。
もう一人は、“ソフィー”という名の写真家。
そして残りの一人は、“お米ちゃん”という名のアーティスト。
ダルマとソフィーは、仕上がった感のある天才。
まず二人の作品は、一言で言ってしまえば、「ぶっ飛んでいる」。
そこに流行りもなければ、廃りもない、普遍で唯一無二の世界観。
うまく表現できないけど、ものすごいノスタルジックだし、とてつもなく破壊的でもある。
そして自分達は、何より彼と彼女との会話が好きだ。
枠とか許容範囲とか常識とかを一切無視した、ただただとりとめのない会話。
あちこちに言葉たちが飛び散るんだけど、よくよく俯瞰してみると、ちゃんと一つの世界が出来上がっている。
そして二人には、避けがたい共通項がある。
それは生き様。
「表現する人は、人生経験に深みがないと、人を惹きつけるものがない」とはよく言われていることだけど、この二人は正にそう。
この二人の人生は、実に波乱に満ちすぎている。(詳しいことは言えないけど)
紆余曲折の急カーブごとに、いろんな種をこぼし、それが作品となり、花を咲かせている。
そして、もう一人の天才・お米ちゃん。
8年ぐらい前かな。
「お米の作品をつくってます」と言って、1万粒以上はある米粒ひとつひとつを樹脂粘土で練り上げた作品を持ち込まれた時には、その狂気さに度肝を抜かれたのを覚えている 笑。
“お米文字”という文字も開発してたんだけど、これは傑作すぎて今も自分のオフィスに飾っている。
その当時、彼女はまだ若く、人生経験もまだまだこれから、という時だった。
何年か経った後、とある理由で人生の深みにハマった。
しょうもないもの(者?)に躓き、引き摺り、背負いこみすぎて、生きる意欲を失い、作品づくりから遠ざかってしまった。
彼女の天真爛漫・自由奔放なキャラは影を潜め、何処にでもいそうな、いわゆる“痛い女の子”になってしまった。
それから数年後の今、お米ちゃんも一皮むけた。
紆余曲折の第1カーブを曲がった。
そして“アーティスト”として帰ってきた。
どんな作品になっているか、楽しみ。
ぜひ、みなさんも一度会いに行ってやってください。
安部寿紗・インスタレーション「遍照」
日時:2017年3月25日(土)ー3月31日(金)10時ー17時
会場:はじまりの杜
